以前、砂防ダム100周年を記念して出版される写真集の撮影依頼を受けたことがある。「砂防ダムの『ありのままの姿』を撮影しても良いなら受けます」と答えたら断られてしまった。
「ダムはムダ」と言われている中でもとりわけ無駄なのは「砂防ダム」である。一部の例外を除けば造ること自体が目的の「土建政治の産物」以外の何物でもない。造ったら造りっぱなし。動物以外住んでいないような山奥ではダムの中に砂があふれ本来の機能を果たしていないのが大半だ。
静岡市の梅ヶ島を流れる安倍川の無数の砂防ダムでは、ダムの機能を果たしているきわめて珍しい例だ。今から300年近く前に起きた大地震で上流部の土砂が崩れ落ち東京ドーム100杯分もの土砂が流されたと言う。
崩壊は現在でも進行していて、1メートル以上もある岩(よく見ると岩の中に鉄筋が見てているのでダムも壊される威力なのか?)が上流の「大谷崩れ」から年に数回の土石流で流されてくるということであるから、本来なら「岩防ダム」と呼ばなければいけないところなのだろうが、砂防ダム工事は必須、地元建築業者にとって安倍川は金のなる川、「砂防天国」である。
ダムも壊されてしまう、こんな危険な場所に人間が住みさえしなければ無駄な工事も不必要だったのだが、この辺りは江戸時代、金山として栄えた場所だった。
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