勇払原野には大地を食い物に生き続ける妖怪が棲んでいる。
周囲の反対の声を無視した強引な苫東着工から10カ月を経た1977年6月10日、国土庁は苫小牧東部を含む大規模工業基地開発計画の再検討を促したが、東港の港造りは予定通り続けられた。
今年、着工から20年を迎える苫東は累積赤字1,600億円を抱え完全に破綻している。皮肉なことに企業の進出が全く無い臨海部の一部では国の天然記念物が大挙して訪れるほどにまで自然が蘇ってしまった。
最近になって、せっかく自然が蘇ったこの場所に核施設(ITER)と国会を誘致しようとする族が現れた。国会議員が身をもって核の安全性を証明しようというのなら笑えるかもしれないが、これはまたしても大地を食い物に生きるものの仕業。
戦後50年を経ても土建政治の体質は変わらない。
写真と文:加藤雅昭
赤旗北海道版 1996年4月16日付紙面に掲載
タイトル写真説明
撮影:1990年9月30日 苫小牧東部工業基地/勇払の陸橋上から
数々の批判の中で苫東開発が始まってから20年。一番重要な臨海部の用地はまったく売れていない「日本一の空き地」。遠方右手が北電苫東厚真発電所で、左手遠方は石油備蓄基地。