昨年暮れ、自民党派閥での裏金疑惑が連日報じられる中、何故か週刊ポスト(2023年12月22日号)は金権政治の象徴ともいえる田中角栄の「決断と実行力」を褒めたたえ、もし今の政界にいたらなどと待望論を掲載した。
しかし、昨日夕方、旧田中角栄邸が延焼中とのニュースが流れ、結果的には金権政治の舞台ともなった目白御殿と呼ばれた建物は約2時間半後に消し止められたものの約800平方メートルが全焼したとのことだ。
田中角栄待望論はこれまでも何度も亡霊のように蘇っては消えていたのだが、権力と金脈の象徴とされた目白御殿が消失してしまったことを機に二度と蘇らないで欲しいものだ。
日本列島改造論の目玉はすべて破綻
もちろん、その理由は時の総理大臣の逮捕というロッキード事件のみならず、日本列島改造論の目玉として苫小牧東部、むつ小川原、志布志湾の3か所に大規模工業基地を建設しようとする計画を強引に推し進めたのも田中内閣だったからだ。
案の定、時代錯誤も甚だしかった重厚長大な計画はオイルショックによる計画見直しを経て、結果的には目玉の3か所すべてが破綻し、そのすべてに石油の国家備蓄基地が建設されたのは皮肉と言わざるを得ないだろう。
潤ったのは角栄地元の新潟県だけ!?
2000年代になった頃、地元への利益誘導で知られる角栄のお膝元、浦佐周辺での取材の際には、彼のせいで滅茶苦茶にされてしまった我が故郷苫小牧の惨状を呟かずにはいられなかったのだった。
前述の記事には執筆者名が明記されていないのだが、前述の国家プロジェクトを破綻させ地方を疲弊させた張本人の一体どこが「時代の閉塞感を打ち破った政治家」なのかを是非とも説明して欲しいものだ。
タイトル写真説明
撮影:1984年6月22日 赤坂、ホテル・ニューオータニ
浜田幸一の衆議院復帰を祝う会(未来の日本を語る会)に出席した田中角栄
■《没後30年》政治に風穴を開けた田中角栄・元首相の「人の心をつかむ言葉」 今こそ必要とされる「決断と実行力」
週刊ポスト2023年12月22日号
https://www.news-postseven.com/archives/20231212_1926618.html?DETAIL