2023年9月7日、神宮外苑再開発計画に関してユネスコの諮問機関である国際記念物遺跡会議(International Council on Monuments and Sites、略称 ICOMOS、イコモス)が文化的資産が危機に直面しているとし、事業者や東京都に計画の撤回などを求めたとの報道があった。
これまでも、周辺住民だけでなく、故・坂本龍一氏や作家の村上春樹氏らが再開発に反対を表明し、9月3日にはサザンオールスターズがデビュー45年を記念する新曲として樹木伐採反対ソング「Relay~杜の詩」を発表している。
この開発計画では、3メートル超の樹木は700本以上、低木を含めると約3000本もの樹木が伐採予定とのことだが、東京五輪の国立競技場建設に伴って1500本もの大木が既に伐採されている。(2015年1月13日 当サイト既報:国立霞ヶ丘陸上競技場既存樹木移植等工事)
神宮外苑再開発の事業者は、樹木は極力、保存し、移植に努めると主張するのだが、東京五輪の際の「国立霞ヶ丘陸上競技場既存樹木移植等工事」と称した工事では、主役であるはずの「移植」工事はわずかに200本あまりに過ぎず、前述のように1500本もの大木が伐採されたという詐欺のような事実が残っているだけに、事業者を信用することは困難だろう。
小池都知事は環境アセスメントについて適切に手続きを進めていると述べているのだが、そもそも、大規模開発事業等による環境への影響を事前に調査することが求められる環境アセスメントは、開発事業者自らが評価を行うため、環境への影響があったとしても「軽微」であるなど、開発者にとって都合の良いデータばかりが並べられるため、開発への免罪符としての側面の方が強いと言える。
そのため、小池都知事の「(環境アセスメントについて)適切に手続きを進めている」とは、「適切に正確な環境への影響を調査している」のではなく、「開発することを前提に進めている」と読み解くことができるだろう。
タイトル写真説明
撮影:2015年1月13日 旧国立競技場とその周辺で伐採された樹木