■「処理水」という名の「汚染水」
2023年8月24日、東京電力は福島第一原発敷地内たまった「処理水」という名の「汚染水」海洋放出を開始した。
日本政府と東京電力は「処理水」には除去しきれないトリチウムが含まれているものの、自然界にも存在する元素だから安全だと主張する。
一方、中国政府は日本全土の水産物の輸入を全面的に禁止するという過剰反応を示している。
さまざまな意味で習近平体制の中国は信用できない存在の国となっているものの、あまりにもトリチウムが「安全」だと主張する日本政府や東京電力は過去に一体となって原発の安全性を主張し、フクシマの悲劇を生んだ張本人だけに、手放しで信用することは困難であろう。
■「トリチウムは汚染水から除去しきれない」は本当なのか?
トリチウムは汚染水から「除去しきれない」ことが強調されているのだが、モーニングショーの玉川徹氏が「コストのことで、合理的な方法として海洋放出を選んだ訳ですけど…、自国内で発生した核物質は自国内で処理するのが原則」と語っている(2023年8月29日)通り、トリチウム水を取り除く技術も確立されているにも関わらず、コスト高になるとの安易な理由でトリチウムが含まれる「処理済みの汚染水」を海洋放出し、中国の無用な反発を招いたともいえる。
そのトリチウムの危険性については、2003年の段階でノーベル物理学者・小柴昌俊氏らが当時の内閣総理大臣・小泉純一郎氏宛に送ったの嘆願書内で述べている。
この嘆願書は2003年当時、国際熱核融合実験炉(略称ITER=イーター)の誘致をフランス、スペイン、カナダ、日本などで誘致合戦を繰り広げており、国内では苫小牧東部や六ケ所村などが候補となっていた時期だ。(結果的にはフランスに決定)
下記嘆願書は当サイト内に開設されている「ITERの苫東誘致に反対する会」のWEB SITE内に掲載されているもので、以前より燃料としてトリチウムを使用するITER反対を唱えていた小柴昌俊氏と長谷川晃氏二人の連名で総理大臣宛に平成15年(2003年)3月10日付の嘆願書だ。
■トリチウムの危険性 ITERの誘致に反対する嘆願書
内閣総理大臣
小泉純一郎殿
嘆 願 書
「国際核融合実験装置(ITER)の誘致を見直して下さい。」
- 理由:核融合は遠い将来のエネルギー源としては重要な候補の一つではあります。しかし、ITERで行われるトリチウムを燃料とする核融合炉は安全性と環境汚染性から見て極めて危険なものであります。この結果、たとえ実験が成功しても多量の放射性廃棄物を生み、却ってその公共受容性を否定する結果となる恐れが大きいからです。
- 燃料として装置の中に貯えられる約2キログラムのトリチウムはわずか1ミリグラムで致死量とされる猛毒で200万人の殺傷能力があります。これが酸素と結合して重水となって流れ出すと、周囲に極めて危険な状態を生み出します。ちなみにこのトリチウムのもつ放射線量はチェルノブイリ原子炉の事故の時のそれに匹敵するものです。
- 反応で発生する中性子は核融合炉の10倍以上のエネルギーをもち、炉壁や建造物を大きく放射化し、4万トンあまりの放射性廃棄物を生み出します。実験終了後は、放射化された装置と建物はすぐ廃棄することができないため、数百年に亘り雨ざらしのまま放置されます。この結果、周囲に放射化された地下水が浸透しその面積は放置された年限に比例して大きくなり、極めて大きな環境汚染を引き起こします。
以上の理由から我々は良識ある専門知識を持つ物理学者としてITERの誘致には絶対に反対します。
平成15年3月10日
小柴昌俊(ノーベル物理学者)
長谷川晃(マックスウエル賞受賞者
元米国物理学会 プラズマ部会長)
■ITER反対 小柴昌俊氏、長谷川晃氏嘆願書提出に関するリンク
●ITERの苫東誘致に反対する会
https://www.gasho.net/stop-iter/
●ITERの苫東誘致に反対する会掲示板 小柴昌俊氏、長谷川晃氏嘆願書提出
https://www.gasho.net/stop-iter/boad/ezjoho.cgi
■トリチウムを取り除く技術は確立している
●汚染水からトリチウム水を取り除く技術を開発 2018.06.27 近畿大学
https://www.kindai.ac.jp/news-pr/news-release/2018/06/012947.html
●トリチウム除去で新手法、放射能汚染水を電気分解 2023年07月26日 東京理科大学
https://newswitch.jp/p/37866
●処理水からトリチウムを除去する仕組みは完成している 須田慎一郎が指摘
https://news.yahoo.co.jp/articles/8b9dd2a99c741a9b1ced0ac54b33274d9d396c6e
タイトル写真説明
撮影:2017年4月13日 福島県浪江町請戸から望む事故を起こした福島第一原子力発電所
廃炉作業は遅々として進んでいない…。