第2回千歳川流域治水対策全体計画検討委員会 要旨記録

1993年8月16日 ウトナイ湖と美々川、背景に苫小牧市街と太平洋 空撮

第2回千歳川流域治水対策全体計画検討委員会 要旨記録

文:「千歳川放水路に反対する市民の会」
事務局・大西 陽一

掲載日:2000年2月13日

第2回千歳川流域治水対策全体計画検討委員会要旨記録

2000年1月18日(火) 13:30~

<記録>
●小林委員長  ただいまから第2回千歳川流域治水対策全体計画検討委員会を開催する。
まず前回の復習だが、第1回目は委員会の進め方について議論した。
・合流点対策案を中心に課題を抽出する
・対策案などについて検討を行う
・課題への理解を深めるため早い段階で関係自治体・諸団体から意見を伺う機会をつくる
・地域の合意を得るため、関係自治体と協議を含めた検討を進める
・前の検討委員会で議論された基本的事項及び合流点対策案の概要及び課題の説明
(委員からの質問及び要望)
・サケ・マスへの影響
・地域の農業など社会的影響
・水田から畑作への転換による保水力の低下の影響
・地下水データの把握(要望)
・合流点対策の実施による千歳川の水位低下のわかりやすい説明(要望)

そこで本日の議事は、合流点対策案の課題への対応等について事務局から説明を受け、その後議論をする。前回出た質問・要望に対する説明を行う。

●事務局(原) 第1回委員会の検討事項を説明。
黒木委員より合流点対策案により千歳川の水位が下がるかどうかわかりやすく説明するよう求められた。
現状石狩川の標高9.2mで千歳川が合流している。図は千歳川新水路方式だが、背割堤方式・石狩川移設方式についても考え方は同じで、千歳川の合流点を出来るだけ水位の低い下流に付け替えるという考え方。
この図の場合は合流点が7.2mとなり、単純には2mの差となるが、水位低下の効果が1.8mとなる。
なぜ新水路が石狩川より低い水位で流れるのかというと、新水路の流量が1,100t/sで石狩川の1/10となる。この流量を低い水位で安全に流れるように十分な河道断面を設定しているため、石狩川より低い水位で流せる。
水田から畑への転作による保水力の低下についてだが、水田に降った雨は初期段階では畦畔に貯留され河川への洪水流量を軽減するが、その後の雨は排水路を通り直接河川に流出してしまい、河川が危険になる頃は水田の保水効果は期待できない。
畑に降った雨は土の中に一時貯留されるので、水を溜める機能自体は畦畔で溜める水田より劣っているが、畑に降った雨は染み込み地下水となって徐々に河川に流出してくるという特徴を持っており、洪水の河川への流出を遅らせるという機能を持っている。そのため河川が危険な状態となった頃でもある程度の効果が期待できる。
洪水量の低減、洪水のピーク流量にどのように効果を発揮するかという意味では、どちらとも言えない。
流出率という降った雨がどの程度の割合で河川へ出てくるかという指標あるが、流出率では水田が0.7、畑が0.6という数字がある。これは畑の雨の方が水田に降った雨より河川に流出しづらいという意味で、そういう考え方もある。
水田と畑の違いによる洪水流出全体に与えるへの影響の差は小さいのではないか。
合流点対策のサケ・マス、農業に与える影響について、また地下水位に与える影響については、合流点対策案の課題と対応のところで説明する。
合流点対策の概要について説明。
新水路方式は、現在の石狩川を動かさず、左岸川堤防沿いに新水路を建設し、千歳川の合流点を石狩川の下流に付け替える方式。
背割堤方式は、石狩川の真ん中に石狩川と千歳川を仕切る堤防を延長11キロにわたり建設し、千歳川の合流点を下流に付け替える。千歳川と背割堤が石狩川の中に入ると、石狩川が狭くなるので、石狩川の右岸堤防を270m程度の幅で引く方式。
石狩川移設方式は、石狩川を上流部で完全に移設し、石狩川には夕張川・千歳川といった一部の支川しか流さない方式で、3つのルートがある。
千歳川新水路方式の主な課題と対応について説明する。
この方式の大きな課題は、地域の基幹産業である王子製紙や北電の施設の移転が必要になるほか、新水路部分だけで約330戸の移転が必要になり、社会的影響が大きい。
必要用地面積 280ヘクタール(工業地域 130ヘクタール、農地 90ヘクタール)
移転対象家屋 約490件(一般家屋 330戸、工場等 80件、店舗等 60件)
新水路が通る地域一体は、既に道路・公園・上下水道といった社会基盤整備が済んでおり、影響を受ける。
これらについては、新水路の建設後においても市民の生活に支障を与えないよう社会基盤の確保・再構築が必要と考えている。

背割堤方式は、右岸堤防を変更することにより住居地域・商業地域・工業地域が影響を受けることになる。工業地域は市全体の3割を占めている。この江別市に与える社会的影響への対応については、移転対象物への単なる補償や市の現有の道路や水道といった社会基盤を確保するということにとどまらず、町全体の機能の再構築が必要と考える。都市計画・市の将来構想といった諸計画の見直しを初めとして、新たな街づくりを行っていくことが対策として必要。

石狩川移設方式について、まず3つのルート案について比較する。
案1は新水路の延長が約28キロと最も長く、そのため用地面積が2,700ヘクタール、残土量も約8,400万立米、移転家屋数約160戸と大きい。既に篠津運河があるが、篠津運河を8倍程度に広げなければならず、新たな地域分断の影響も大きいと考える。
江別市と当別町の間を通る案2は、延長16キロで中間の長さになっているが用地面積で1,400ヘクタールが必要。残土量が3,000万立米、移転家屋数が約90戸と3つの案で一番小さいが、この案は新たに水路をつくるため地域分断の影響が最も大きいと考える。
現在の石狩川の護岸沿いに建設する案3は、延長が14キロと最も短く、事業用地面積も1,200ヘクタールと小さいが、残土量が4,300万立米、移転家屋数が130戸と延長が短い割りには小さくない。地域分断については、石狩川に併設するので案の中では小さいと考えられる。

地域分断による影響について説明する。
案1は、国道で1.2キロ、道道で3.6キロ、市町村道で69キロがルート上にある。最も短い案3は国道が0.9キロ、道道が1.3キロ、市町村道が25キロがルート上にある。道路以外にも区画割に沿って縦横に用排水路が通っている。
移設により道路・用排水路を分断することになるが、その対応は地域に影響を与えないように道路橋や水管橋などを整備し、現在の機能を確保するよう考えている。
2つ目の課題の農地・農業に与える影響について説明する。
どのルートも水田と畑がまだらに広がっていて、これらの農地が消失し農業に与える影響が大きいと考える。
案1は、水田と畑をあわせて1,930ヘクタールの農地が影響を受ける。江別市が510ヘクタール(6%)、当別町が370ヘクタール(4%)、新篠津村が810ヘクタール(17%)、月形町が240ヘクタール(8%)。
案2は、1,110ヘクタールの農地が消失する。各市町村の影響については、それぞれ農地の5%程度となる。
案3は農地面積の影響が一番小さく、900ヘクタール。この案は江別市単独で、江別市の11%を占める農地が影響を受ける。
これらの農業の影響への対応だが、農地を提供した方には補償により対応。地域の農業に与える影響については、治水対策にあわせ地域の農業に少しでもプラスになる対応が必要。
石狩川移設方式の主な課題のもう一つは、大量に発生する残土処理と軟弱な泥炭粘土の処理で、石狩川下流部の低平地には軟弱な泥炭が広範囲に分布している。泥炭層は大体のところで2m~4mの厚さになっており、ところによっては8mの厚さのところもある。このような地域に新しい石狩川を建設するということは、軟弱な泥炭を平らに掘削しなければならないということを意味する。
これらの土は掘削は可能だが運搬が大変で、運搬先で引き均しても土が軟らかくその上をブルトーザーが走れない。そのためセメントを混ぜ土の強度を高めるという作業が必要になり、その分コストが高くなる。
最も残土の少ない案2でも3,000万立米の残土が発生する。案3については4,300万立米で、そのうち6割を泥炭・粘土で占めている。
処理の難しい残土をどうしたらいいかということだが、どこかに置いて公園にしたり、農地に置いて置き所に農地を復元するという対応が考えられる。
一つの事例として治水事業で発生した残土を置き土するのにあわせ、大区画の圃場整備を実施し、効率のいい農業に再編するという事業が行われている。(石狩川支川の雨竜川の下流について説明)

背割堤方式の主な課題と対応について説明する。
この案の最も大きな課題は、10,000トン以上流れる河道の中の軟弱地盤の上に約11キロの長さの大きな堤防を構築するという技術的な難しさだ。5年に1度の頻度で洪水が越水してくる可能性もあり、工事中の出水対策や工事後の手戻りといった技術的難しさも抱えている。
背割堤を建設する手順は、用地を提供してもらい、高水敷を掘削した土で右岸堤防をつくる。その後旧堤を撤去し、新しい河道掘削・浚渫を行う。ここで新しい断面が確保できて初めて背割堤の建設に着手できる。仮締め切りの実施後に河道の中の軟弱地盤の地盤改良を行い、その上に背割堤の基礎を盛り土し、さらにその上に背割堤の盛り土する。その後に千歳川新水路の河道の掘削・浚渫を行うという手順で、この手順を繰り返すということになる。並行作業ができない工事が多いため、順次工事を進める必要があり長い年月を必要とする大工事となる。
※ 仮締め切りのまま排水せず行う工法について説明
(全言)そこで仮締め切りの中の水を排水しながらドライの状態で行う工事の難しさですとか、洪水の危険性や洪水後の手戻りといった点をできるだけ軽減する工法はないだろうかというのがこのイメージ図でございます。仮締め切りの中の水を汲み出さないまま、水がある状態で土砂をどんどん盛り立てまして、土砂が盛り立てた後にサンドコンパクションパイルと呼んでますけれども、砂の杭を打って地盤を改良するという工法ですけれども、サンドコンパクションパイルによりまして地盤改良をまとめてしてしまって、その上に背割堤を建設するという工法でございます。
ただこの工法を採用した場合に事業費なんですけれども、盛り土に使う土の改良費用ですとか、サンドコンパクションにかかる費用といったことが大きくなりまして、約8,500億円という事業費が必要になります。この中には千歳川での遊水地ですとか、堤防強化といった20年確率に対応した本支川対策の事業費も含まれてはいますけれども、約8,500億円の莫大な事業費が必要であるということで、工期も約40年という長い年月が必要になるということなわけでございます。
背割堤につきましては技術的に全く不可能な工事というふうには言えないんですけれども、非常に難しい工事でございまして、地盤の弱さですとか、使用する土の強さ、それから工事中の出水対策といった技術的な課題を考えますと、大きな費用と工期を考える必要があるということでございます。

背割堤方式の2つ目の課題として、石狩川の右岸側農地あるいは農業に与える影響について説明する。
背割堤方式では石狩川の右岸側に幅270m、延長11キロの土地が必要。この土地の現在の利用状況は、水田140ヘクタール、畑80ヘクタール、牧草地40ヘクタールの計260ヘクタールの農地が影響を受ける。江別市全体の3%の農地に相当する。
農業へ与える影響への対応の考え方は移設方式と同様、農地提供者には補償により対応。地域の農業に与える影響に対しては、治水対策の実施にあわせて地域農業に少しでもプラスになるような対応が必要ではないか。

合流点対策の5案に共通する課題について説明する。
1 地下水低下と地盤沈下について
石狩川下流部の低平地には強度的に軟弱な泥炭が広範囲に分布しており、泥炭は水分を多く含んでおり、上から力がかかると縮みやすく、乾燥や上からの加重により沈下が著しいという特徴がある。この地帯は現在でも沈下が進行している。このような地域で掘削工事を行うと、さらに地盤沈下を進行させかねない。
掘削による地下水低下量については、千歳川新水路方式と背割堤方式では大体同じで、左岸側の地下水が低下し、泥炭層が厚く分布しているような所では地盤沈下の可能性がある。石狩川移設方式では、石狩川の堤防の間隔が広いということで、地下水が下がりはするが、地下水の影響の範囲が堤防の中におさまるのではないか。
対応については、詳細な現地調査を実施した上で地下水対策を行う。例えば新水路を実施した後に矢板を入れて現状の地下水位を維持するとか、あるいは事前にある程度の地盤沈下を想定して、事前に既設構造物の対策を実施するといった対応を考えている。
前回地下水データの把握の指摘を受けたが、今後観測井戸を増設し精度を上げていきたい。

2 合流点対策の実施によるサケ・マスの遡上効果に与える影響について
この影響は大きくは工事中と、完成後の影響に分けられる。工事中は、陸上で工事をする千歳川新水路方式や石狩川移設方式については大きな影響がないと考えている。背割堤方式は、盛り土をしたり掘削をしたりという工事が河道内で長く続けられるため、工事中の濁水の影響があると考えている。
完成後については、サケ・マスが水の臭いによって遡上する性質から、遡上ルートが代わっても大きな影響はないと考えている。ただ石狩川移設方式については、完成後は千歳川と夕張川しか流れないので、流速が遅くなり稚魚が海におりるときにカモメなどの外的に襲われやすくなる可能性がある。
対応については、背割堤方式の工事中の影響については、十分に濁水処理実施することで対応したい。
石狩川の移設方式による流速の減速については大きな影響はないと思われるが、調査を実施した上で現在の石狩川にある程度の維持流量を分派して、流速が落ちる程度を少なくするということも一つの案として考えられる。

次に内水面漁業への影響について説明する。
石狩川下流部ではカワヤツメ・モクズガニ等の漁が行われているが、千歳川新水路方式については陸上の工事なのでほとんど影響がないと考える。背割堤方式の場合は、河道内の工事中の濁水による影響があるだろうと思われる。さらに右岸側の引き堤工事により、モクズガニの漁に一部影響が出ると思われる。石狩川移設方式については、カワヤツメの産卵床は石狩川の上流部にあると言われているので、実施されると産卵床と実際に漁をしている区間を分断してしまい大きな影響を与えるのではないかと考える。
対応については、影響を詳細に調査し漁業関係者と協議・調整していきたい。
カワヤツメの産卵床の分断については、平常時に現在の石狩川に新しい石狩川からの流れをある程度確保することにより、カワヤツメへの影響をできるだけ小さくするということも案の1つとして考えられる。

自然環境全般についての影響について説明する。
合流点対策実施個所の近傍において植物は全体で97科570種で、着目種は16種が確認されている。鳥類は全体で34科120種で、15種の着目種が確認されている。魚類については全体で19科49種で、8種の着目種が確認されている。現時点では、この地域だけに生息する希少種が確認されておらず、河川周辺のほとんどの地区で農地等の土地利用がされているので、合流点対策の実施によりこれらの動植物へ大きな影響を与えることはないだろうと考える。ただ石狩川右岸に合流する篠津川付近に河畔林があり、渡り鳥の中継地となっており、渡り鳥への影響が懸念される。
これらへの対応については、合流点対策の実施により動植物にある程度の影響を与えると考えるが、できる限り工事中の配慮や、工事と並行して代替えの機能を確保するといった影響の軽減策を図っていきたい。

合流点対策すべてに共通する課題だが、放水路計画と違い千歳川が石狩川に合流するので流量が千歳川の1,000t増える。先の検討委員会では、河道の維持のためこれ以上低水路の幅を広げることができないということで、1,000tの増加対策のため右岸堤防を500m引き堤するという案が示されていた。しかし広大な用地が必要となり、社会的影響が大きいため、できるだけ引き堤の幅を小さくできないかという検討をした。
結果として、中水敷きを掘削することで断面を確保し、右岸堤防を500mから200mへ抑えるよう考えた。
石狩川の1,000t増の対策のため必要となる用地面積と移転対象家屋だが、用地面積は500m引き堤のときは全体で500ヘクタール、(1号地?)が200ヘクタール、移転対象家屋が30戸とう影響だが、200m引き堤と中水敷の掘削だと必要用地面積が120ヘクタール(うち農地が40ヘクタール)、移転対象物が全体で10戸という状況だ。

これまで説明した合流点対策案の課題への対応について
千歳川新水路が江別市に与える社会的影響は、移転対象物の単なる補償や市の現有の社会基盤を確保することにとどまらず、町全体の機能の再構築が必要である。諸計画の見直しを初め新たな街づくりが行われていくことが対応策として必要と考える。

石狩川の移設に伴う地域分断の影響については、地域に影響を与えないよう現在の機能を確保する必要があり、必要なところに道路橋や水管橋あるいはサイフォンを設置することで対応するよう考えている。

広大な農地と大量の掘削残土処理については、地域の農業に与える影響に対して、治水対策の実施にあわせて地域の農業に少しでもプラスになる対応が必要と考えており、掘削残土の置き土とあわせて大区画の圃場整備を実施し、効率のいい農業に再編するという雨竜川の事例も対応策の1つとして考えられるのではないか。

地下水低下や地盤沈下の影響については、詳細な現地調査を実施した上で止水矢板などの地下水対策を実施するとか、ある程度の地盤沈下を想定した上で既設の構造物の対策を実施する等の対応を考えている。

サケ・マスの遡上コウカイ、内水面漁業への影響について
(現石狩川に平常時水を流す対策案のみ説明)

動植物等自然環境に与える影響については、合流点対策の実施により渡り鳥を含め動植物にある程度の影響は与えると考えているが、なかなかこれをすべて解決するということにはならないが、工事中の配慮、工事と並行して代替機能を確保していくといった影響の軽減策を講じていきたい。

石狩川流量の1,000t増加については、先に検討委員会で右岸側堤防を500m引き堤するという案が示されていたが、これは広大な用地が必要となり社会的影響が大きいということで、できるだけ引き堤の幅を小さくできないかと検討し、中水敷を掘削することで断面を確保し右岸堤防の引き堤幅を200mに抑えるよう考えた。

●佐藤委員  合流点対策の実施により7.2mに下がるということだが、国道の橋も生きるということか、
●事務局  1.8m下がれば、堤防を引いて拡幅するなど大きな改修をせず流せると考えている。
●黒木委員  話を聞き、石狩川本川をすごくいじめる計画という印象を持った。移設方式でも何でも結構だが、延長と事業用地を比較すると恐らく1キロ幅しかとっていないと見えるが、そうすると現在の石狩川程度しかとらない。それで石狩川が十分安全だということになるのか。
●事務局  現在の石狩川は堤防と堤防の間隔が910m。石狩川移設計画についても上流から下流を安全度を同じにするという意味で、安全のバランスから1キロという川幅を採用している。
●黒木委員  現在の石狩川は、それほどの流下能力を持っていないので低水路を無理して広げている。それをなぜ新しい計画に引っぱり込むのか分からない。石狩川をもっと大事にするべきではないか。
●事務局  石狩川については、約90年の改修の結果この川幅が採用されている。この川幅を前提にして河川計画を立て実施してきているので、この幅をベースにして河道計画を立てていきたい。
●黒木委員  1,000t増という説明を受けたが、当初の案より引き堤幅を500mから200mに縮めた。その代替として中水敷のすきとりを行うということだが、現在の高水敷は非常に微妙で、あれ以上すきとる、あるいは掘削をすると相当湿潤な状態になると理解している。維持管理上又は生態系に影響はないのか。
●事務局  そういう懸念はしている。中水敷を掘削するに当たって堤防沿いまで湿潤状態になると堤防の安全上問題となるので、堤防付近の100m程度の幅についてはいまの高水敷を維持し、それより水辺に近い川の中水敷を掘削する。冠水頻度は年1回程度と水はつきやすくなるが、堤防を安全に守るという範囲内で中水敷を掘削するという案だ。
●三田地委員  地盤沈下の分布図があるが54年までとデータがかなり古い。その後のデータを持っていると思うが、整理するよう要望する。
●小川委員  5案の図を人に見せると、大規模な計画だと思うだろう。100年確率でやるという前提だからだと思うが、今後地元からこんな大きな計画はいらないという議論が出た場合でも1/100に固執するのか。
●藤間副委員長  日本の考え方では、洪水によって受けるダメージを受ける被害は全国で平等という考えがあるので、石狩川は1級河川なので150年に1度の洪水に対応するようにという格好が出ている。現在は石狩川にどれぐらいの水が流れるかということで、18,000という水が出ている。基本高水を決定するのは国ということで、それで150年に1度というものが出ている。
ただし日本は先ほど話したようにダメージが均等にかかるということで、石狩川の上流・中流・下流と分けた場合、それぞれ別の確率年をいま現在決めることができない。それで上流から下流まで一貫として1/150という確率をとっている。
これから将来にわたって地域の人がそれを決定するということができれば、住民との相談の上で100年、150年という議論は出ると思うが、いまの河川法では河川の規模で確率が決まっているので、こういう大規模な工事になる。
千歳川は合流点の石狩川の水位が高いため、石狩川をなおすか千歳川をなおすか、どうすればいいかということで、先の検討委員会では石狩川をずらして低いところで千歳川を合流させようということになった。石狩川のような大河川を移すとしたら、当然このような大規模な工事にならざるを得ないのが実情だ。
●小川委員  これから地元と話し合いをしていく中で、このような規模と確率の必要はないんじゃないかという議論が出てきたときには、考慮しなければならないという含みを持っていると理解していいか。
●藤間副委員長  この委員会では決定はできないと思うが、地元から意見があった場合には参考として将来生かせるような格好に検討することはできると思う。
●荒木委員  水田のダム機能を考えると、水田を遊水地として考えることができないか。
●小林委員長  私の理解では、まず5案を突っ込んで検討し、その後地元の人などと話をする中でどんな可能性があるか、どんな修正の余地があるか、そういう議論が出てくると思う。
荒木委員の指摘する問題等、色々問題点があるが、そういうものがどうなるかというたぐいの議論はこの先で多分検討されるのではないか。
●荒木委員  5案のどれかの選択という印象を受けるが、場合によってはその中のいくつかの折衷案や組み合わせ、他の対策と組み合わせた総合的なプランも考えられるのではないか。
●小林委員長  先の委員会で代替案が出され、それを受けてこの委員会が発足しているので、まずそこから検討するということで、これから約2年を目途にするということで今後いろいろな問題点が出てくると思うので、5案のどれかということではないと考える。
●事務局  遊水地の件だが、全国では遊水地の中で耕作地として土地利用するタイプもある。現在石狩川流域には砂川遊水池という耕作地として利用しないタイプが完成しているが、石狩川の全体の計画の中ではかなり大規模な遊水地を石狩川中流に設置しなければならないという計画で、その中では田畑と共存できる遊水地を検討している。
もともと石狩川の計画を立てるとき、それぞれの土地利用からどのくらいの水が大雨の時に出てくるか、それを決めるときに実際の洪水のデータをもとに決めている。その中で田畑の土地利用を反映したような流出しやすさは折り込み済みで計画を立てている。
●荒木委員  私の発想は、石狩川の水量を超えた場合にそれを水田に取り込んで、もっと水田のダムの機能を果たしてもらうことは出来ないかということで話した。
●事務局  田畑を土地利用した上で遊水地に使っている例があるので、次回までに調べて紹介したい。
●佐藤委員  案ごとに移転家屋、農地面積とかが出されるが、大事なのは工場での生産額が幾らかとか商業販売額が幾らかとか、農業生産額が幾らかだ。土地などがなくなるということではなく、そこで果たしている経済活動がなくなるという捉え方をするべきで、そのデータをつくってほしい。
●事務局  どの程度の精度になるか別にして提出したい。
●山内委員  出せるのであれば、千歳川流域の漁業関係についても出してほしい。
●事務局  漁業関係については、漁協単位で統計データで取っているが、その範囲内で出したい。
●小林委員長  佐藤委員から出された意見は、論じだしたらものすごい問題になると思うが、災害による損出を防ぐために逆に失う経済活動の方がはるかに大きいということはあり得ると思う。そういう比較でどこまで議論できるかという本質を含んでいると思う。
●小川委員  石狩川移設方式の地域分断の影響について、案3の方が残されたエリアが小さくなるので影響が大きいのではないか。
●事務局  狭い場所が残されるという意味だと思うが、案3は石狩川のすぐ隣に新石狩川をつくるので宅地や農地は残らない案になっている。
●黒木委員  合流点対策案の中で、背割堤方式だけが40年という長い年月がかかる。早期に効果を発揮できないか。
●事務局  どうしても背割堤方式の場合は、他の方式と違い今ある川の中で工事をしなければならないので、今ある石狩川の安全を確保しながら進めていかなければならず、並行作業が出来ないので、新しい工法でやったとしてもこの程度かかると考える。
●小林委員長  かなり細かく突っ込んだ議論が出ているが、先ほどの事務局からの説明に関わる議論はこれぐらいにして、議題の2番目に入りたいと思う。
関係者との意見交換のあり方についてということだが、全体計画の策定に当たり本委員会の策定要領の中に「関係者と意見交換をしながら検討する」こととなっている。今度皆さんと意見交換をすることが必要と考えているが、どういう形で意見交換したらいいか検討願いたい。
これについては委員に検討の時間が必要と考えるので、次回の委員会で議論したい。
(前検討委員会で行われた23回の意見交換会について事務局より説明を受ける)
次回、関係者との意見交換を、いつ、誰から、どういう団体、内容、どんな形式で意見を交換し委員会としてどうするか、そういったことについて皆様から意見を伺いたい。

議題3のその他について、現地調査の実施について、第1回の委員会の終了後、複数の委員から現地調査を行い現地の状況をある程度把握しておきたいという意見があった。今後の議論のため現地調査を行いたいと考えている。

(事務局より現地調査内容について説明)

●小林委員長  今後の予定は、現地調査を終えた後2月下旬または3月上旬に実施する。
議事予定は、本日の続きとして合流点対策案の課題への対応についての議論及び関係者との意見交換のあり方について。
それでは本日の委員会を終了する。


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タイトル写真説明
撮影:1993年8月16日 上空から見たウトナイ湖全景、右側から蛇行しながら画面中央に注いでいるのが美々川、奥に苫小牧市、苫小牧港、太平洋が見える