ニコン、一眼レフカメラ開発から撤退報道の衝撃

Nikon F

朝から参議院選挙戦最中に銃撃され死亡した元首相の家族葬の様子があたかも国葬のごとく報じられ続けたことに辟易し、美辞麗句が並べ立てられいることに違和感を感じていたのだが、日経新聞がイブニングスクープとして18:00付で報じた記事が衝撃的だった。

「ニコン、一眼レフカメラ開発から撤退 60年超の歴史に幕」(日経新聞 2022年7月12日 18:00 )

この報道に対して株式会社ニコンは「一部報道機関より、当社が一眼レフカメラ開発から撤退という報道がなされましたが、憶測によるもので、当社が発表したものではありません。」とコメントしている。

バッテリー不要で撮影ができる71万台のNikon FTOP写真はNikonが1959年に初の一眼レフカメラとして発売したNikon Fだ。
このカメラは大学で写真を学んでいた1975年、もしくは1976年頃、新宿のコマ劇場近くの中古カメラ店ピンホールで購入したものだと記憶しているが、製造番号は71万代だから、4~5年落ちの中古カメラを購入したことになり、半世紀以上前の製品ということになる。
大学時代には地元の北海道苫小牧市でスタートした苫東開発の撮影で勇払原野を一緒に彷徨い、戦時中のトーチカ内での野宿も経験している。
1980年に専属フリーとして週刊明星写真部に在籍していた時代も、1984年に完全なフリー写真家となってからも、露出計のないこのカメラの信頼性はメインで使っていたF2よりも抜群に高く、かなりの頻度で使っていたカメラだ。
フィルム交換の度に裏蓋を全部外さなければならず、シャッターボタンの位置もボディーの後方にあり、決して使いやすいカメラとは言い難いものの、その信頼性の高さは後継機種のF2やF3の比ではなく、海外取材にも予備カメラとしてカメラバッグに必ず入れていたものだ。

私がデジタル一眼レフカメラを導入したのは2002年のことであるが、本格的にデジタルに移行したのは2008年のD3からと、かなり遅めだったため、このNikonFも頻度こそ少なくなっていたが21世紀まで活躍していた。その後は思い出したようにロッカーから取り出してシャッターを切っているが、耳で聴く限りではシャッター速度も問題ないように思える。

電池のいらないカメラだから50年以上経過していても、フィルムさえ装填すれば今でも問題なく撮影できるはずだ。
撮影するのに電池がいらなかったフィルムカメラも電子制御のシャッターとなり、ニコンでもF3からは電池がなければ撮影できないカメラとなっていたものの、汎用の単三電池が使えたため、日本全国…世界各地で手に入るため、さほどの影響はなかったのだが、デジタルカメラにおいては消費電力の多さからほとんどが専用のリチウムイオン電池となってしまったため、バッテリー問題は深刻となっている。

■ミラーレスカメラ最大の弱点、バッテリー

中でもEVFを使用するミラーレスカメラでは専用電池でも300~400枚程度しか撮影できず、デジタル一眼レフカメラの3~4000枚の1/10程度の枚数しか撮影できないことは報道写真家にとっては大問題といえる。
もちろん、常に都会でしか撮影しない写真家にとっては問題になることは少ないだろうが、2018年9月6日に厚真町で最大震度7を記録した北海道胆振地方東部地震では地震発生後11時間は全道でブラックアウトし、全道で停電が解消したのは約64時間も後の事であり、報道写真家にとっては事前に大量のバッテリーを準備しなければならず、バッテリーの持ちは大きな問題となるはずだ。

ニコンに限らず販売比率ではミラーレスの割合が増えており、報道写真以外では問題になるケースは少ないとは思うのだが……。
近い将来、画期的な技術革新で省エネを通り越してバッテリーの必要がないミラーレスカメラが開発されれば一気に問題解決ということにはなるのであろうが。

 


2022年7月24日リンク追加

ニコン「一眼レフ開発撤退」報道に衝撃と寂しさ カメラ開発の重鎮が語る信頼度「車と交換して!」 後藤哲朗氏インタビュー
2022/07/24 11:00 AERA.com

https://dot.asahi.com/dot/2022072200069.html?page=1