「千歳川放水路に反対する市民の会」事務局・大西陽一氏から寄せられたレポート第一弾、「千歳川放水路計画の概要とこれまでの経緯」に続くレポート第二弾。こう着状態が続く千歳川放水路計画をめぐる最近の動きを紹介しています。(加藤)
千歳川放水路計画 2
文:「千歳川放水路に反対する市民の会」
事務局・大西 陽一
掲載日:1998年11月9日
千歳川放水路計画をめぐる最近の動き
昨年9月、道知事の要請を受けて「千歳川放水路検討委員会」(委員長小樽商大学長 山田家正氏他6名、以下委員会)が発足し、関係する自治体、自然保護団体、農業関係者、漁業団体、道弁護士会からのヒヤリングを行ってきましたが、検討委員会自体非公開であったため、わずかに委員会終了後の記者会見の場で、委員長が経過をまとめた個人メモが報告されるのみで、議論経過が全くわからない状況でした。
それに対し「千歳川放水路に反対する市民の会」「日本野鳥の会」「北海道自然保護協会」「環境市民連絡会」「市民ネットワーク北海道」「とりかえそう北海道の川実行委員会」(以下6団体)は、論議経過がすべて明らかにされていなければ、道民の合意など得ることができない。”多くの道民の合意形成が得られるような治水対策”を追求したいとしている委員会の立場にも非公開は反するのではないかと、委員会が開催される都度公開を要求してきました。
また、私たち6団体に対するヒヤリングの結果から、「治水に対する認識が不足している」「委員会を構成している河川工学者ですら河川法改正の主旨さえ理解していない」まして「開発局から委託研究を受けていては公正な議論ができない」「少数の委員で、しかも短期間に”放水路以外の治水対策の検討”は困難であると考えられる」等から、多くの専門家の意見を聞くべきだとして、申し入れを行いました。
千歳市駒里の地下水揚注水試験場 1997年9月26日撮影 |
結果として、委員会での論議に進展が見られなかったことから、拡大検討委員会(上述のヒヤリングを行った団体から2名ずつで構成、漁業団体は不参加)が設置されました。
10月末までに11回の拡大検討委員会が開催されましたが、基本高水量をめぐる議論と放水路計画の対案となる総合治水対策を中心とした議論が行われ、現在、背割堤・分水路・移設の3案を検討してきますが、そのいずれも北海道開発局が検討委員会の委任を作成しているため、大規模な計画になり放水路案と同様に実行不可能な代物といわざるを得ません、私たち6団体は、洪水被災地の農業者との話し合いから、小規模の対策の積み上げで十分に対応できると確信しており、その裏付け作業を各団体と連携をとりながら進めています。
あたかも科学的に決められたように扱われている基本高水量が、実は治水の安全度と工事の規模、自然や住民生活への影響といった要素によって大きく変化します、基本高水量を大きくとっても、洪水が全くなくなるものではありません。むしろ問題となるのは、「基本高水量を上回った場合の超過洪水対策」であり、治水対策案を地域住民に周知し、問題となる箇所を修正しながら、治水計画を作り上げてゆくべきと考えます。
そのためには河川法の改正に伴い流域住民の意見を反映させるため、地方河川審議会を設置させ、委員に法律や経済の専門家や自然保護関係者、農・漁業の関係者、市民団体などを参加させ、治水問題を行政や専門機関だけに任せるのではなく、私たち市民がいかにこの問題にかかわっていくかということだと思います。放水路計画の撤回はもとより、関係住民の納得の得られるような治水対策を行うよう強く知事に働きかけていくなど、取り組みを強化していきます。
補足
1997年7月に当時の北海道開発庁長官・稲垣実男氏が放水路のための予算要求はしないと述べたが、佐藤静雄建設政務次官が「ミニ放水路」方式を口にするなど予断は許さない。上記の写真の誰が見ても実現不可能と思える地下水揚注水試験施設建設などを含めて調査費の名目で既に200億円もの血税が使われている。(文:加藤雅昭)
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タイトル写真説明
撮影:1989年8月29日 千歳市内を流れる千歳川