「小学館サライ著作権侵害裁判」の第一審では、送信可能な状態に置いたことと営業妨害については棄却されたもの、複製権侵害とポジフィルムの所有権については、ほぼ全面的に認められ小学館に賠償命令を言い渡した。
被告の小学館は無断デジタルデータ化に関して提訴前の話し合いでは複製権侵害にあたると認め謝罪していたが、裁判になると否認に転じ「仮に、被告の行為が、原告の複製権を侵害するものであったとしても、原告には財産的損害は何ら発生していない」と主張し、ポジフィルムの紛失に関しても「著作権は写真家にあるものの、ポジフィルムの所有権は小学館に帰属する」ため「自己の所有物の紛失だから原告に財産的損害は発生していない」と主張し、紛失により二次利用の機会を奪われてしまった損害を認めなかった。
このような被告の主張に対し社団法人日本写真家協会を中心に「写真家(著作権者)の権利を著しく制限し、形骸化することになるため、到底容認することはできない」として、2006年12月より写真家やクリエーターなどに被告の主張に対する反対署名を呼びかけ、2007年1月30日、東京地方裁判所へ「写真家の著作権とポジフィルムの所有権に関する要望書」とする1,902名(うち写真家の署名者数は1,094名)の署名名簿を提出した。短期間に予想をはるかに上回る多数の署名が集まり、関心の高さが伺える。
この署名には日本を代表するほとんどの写真団体(日本写真家協会、日本広告写真家協会、日本写真著作権協会、日本スポーツプレス協会など)が賛同し、雑誌編集者、ライター、画家、イラストレーター、テレビ関係者、新聞社をはじめ多くのクリエーターの協力をも得られた。また、「すべての出版社が小学館のような著作権に対する考え方であると同視されては迷惑」として署名賛同の意思表示をしてくれた大手出版社の編集者の協力も得られた。
その結果、個人の損害賠償請求裁判ではあるが、さながら小学館 Vs. 写真界全体との様相を呈し、他のマスコミからも注目の裁判となっていた。はからずも今回の判決は、署名活動の影響が少なからず反映され、裁判所は複製権侵害とポジフィルムの所有権について、原告の主張をほぼ全面的に認め小学館に賠償命令を言い渡した。