「’97東京」連載 (8)

「ケータイ」 1997年3月11日 東京新聞夕刊掲載

写真と文:加藤雅昭

 


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ケータイ

 よく考えてみると電話というものは不思議な代物だ。誰もいないのに機械に向かってひとり言をぶつぶつ喋っている様は、もしかするとかなり異様なのかも知れない。
これが手のひらにスッポリと収まってしまうケータイの場合はなおさらだ。町なかをひとり言を言いながら歩いている人との見分け方は小さなアンテナと片手を耳の付近にかざしているかどうかだけである。小型化が進んで耳掛けケータイだの補聴器型ケータイなんかが発売された日にゃ、いよいよ見分けはつかなくなって街中にひとり言を喋る人間があふれることになる。