千歳川放水路環境

「千歳川放水路計画」終結への序章-大西陽一

 utonaiko_06.jpg「千歳川放水路計画」終結への序章

文:「千歳川放水路に反対する市民の会」
事務局・大西 陽一

掲載日:1999年6月6日


ウトナイ湖に戻るガンの群れ(撮影:1999年3月23日)

 千歳川放水路計画は、1982(昭和57)年に北海道開発庁が石狩川水系の洪水対策のために策定した計画です。1981(昭和56)年の大規模な洪水を契機に千歳川放水路計画が急浮上してきた。それまでの基本高水流量を9,000立方メートル/secから2倍の18,000立方メートル/secに引き上げられ、その流量配分をダム2,000立方メートル/sec・遊水池1,000立方メートル/sec・本川14,000立方メートル/sec、残り1,000立方メートル/secを流域とは無関係な太平洋に放水路を作り洪水時のみ千歳川を逆流させ流出させることが決定された。
 この17年間、放水路をめぐる様々な動きがあったが、放水路の完成により、自然破壊・農業・漁業に大きな被害を被ることになる苫小牧での反対運動は、「千歳川放水路に反対する市民の会」が中心となって、80,000人を超える反対署名を集め、また、同時に洪水被災地住民との対話集会を開き代替案の模索に取り組んできた。(写真:大西陽一氏)
 本来、一刻を争うべき洪水対策が17年間にも及ぶ膠着状態になった大きな原因は、千歳川放水路計画のみならず、治水あるいは利水に伴う大規模公共工事が社会問題に発展している要因と同様、河川を管理する側が計画立案に至る経過(データ含む)を全く公開していないことにあった。
 このような状況下、北海道知事の私的諮問機関として「千歳川流域治水対策検討委員会」を発足させ、「道民合意を得られる結論を求める」としたが、検討委員会が非公開となったため、「論議過程が道民に明示されない状態で、道民合意を得ることはできない」として、全面公開を求め、途中からではあるが公開となり、論議経過の透明度が高くなった。

検討委員会の「中間まとめ」(案)(要旨)
1 総合治水対策を推進する。千歳川放水路計画については検討の対象としない。
2 千歳川と石狩川の合流点の整備計画については、「新たな検討の場」を発足させ、関係住民の合意を得て立案する。
3 治水対策の一環として、関連する社会制度の整備充実を図る。
4 合流点整備をはじめ、有効であると思われる様々な洪水解決策を検討し、総合治水対策としてまとめた。これらを実施することによって治水は著しく改善されると判断する。新遠浅川案(注:ミニ放水路)のような流域外対策案は、総合治水対策の進行状態を見た上で、万一それらが著しい効果を果たさないと判断した段階で、新たな検討事項として取り上げるべきものと考える。
5 放水路計画により、関係住民の将来設計に支障あった場合、国も道も十分に配慮し誠意をもって対応する必要がある。

新遠浅川案の取り扱いについての補足説明 (要旨)
  検討委員会が、「地域合意としての治水対策」という知事から付託された課題と、検討委員会の意見(河川工学の委員)が一致しない状況を勘案すると、結論の限界であると考えるが、両論併記ではなく、優先順位が明記されていることを理解していただきたい。流域外対策が将来の検討課題になる可能性を残したことが総合治水対策の進展の妨げになることがないように、知事が関係省庁に説明し配慮を求めることが必要となる。

中間まとめの評価、及び今後の取り組みについて
 検討委員会の論議過程で基本高水流量18,000立方メートル/secを『変更する必要はない』としたが、恣意的に高めに設定された基本高水流量を変更しなければ、いずれ大規模工事の可能性を残したといえる。実際、「中間まとめ」の前提である、『可能な限り小規模工事で関係住民の合意を得る』可能性が低くなり、同一流域とはいえ、河道移設案や新遠浅川放水路などの大規模工事が代替案に残った。
 私たちは、被災地流域住民との対話から、流域全体を同じ安全度でカバーする必要性はないと考えていますし、石狩川水系の中での総合治水対策が脇に置かれ、千歳川の治水に限定された論議経過に不満を残した。 特に私たちが提唱していた代替案は石狩川の水位低下を図ることにより千歳川の洪水を防ぐものであり、これが検討されていないこと、また、「流域外」として石狩川での対策より新遠浅川が検討課題にされる可能性があることに不満が残る。また、超過洪水対策・流出規制・農業政策への言及・ハザードマップの策定(都市計画に位置づけ)などを「新たな検討の場」に総合治水対策として明示すべきで、さらに、その前段に当面すぐに実施可能な対策の実施目途を明確にする必要があった。
 しかしながら、一旦、閣議決定までされた千歳川放水路計画の中止決定は、今後の治水対策に大きく変革をもたらす契機になる可能性ををもたらし、また、新河川法の趣旨に沿ったものと考えます。


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